オオクサ/四ツ谷
- 2023.03.21
- 和食 新宿・荒木町・四ツ谷
ザ・日本のプライド。世界最高峰の焼鳥
新宿の超人気焼鳥店「鳥みつ」を閉め、店名を変えて2019年の11月に荒木町で再度オープンした「オオクサ」。オープンから間もないですが既に食べログ評価は4.2点超(2023.1時点)でSilver部門獲得と、焼鳥としてだけでなくレストランとして東京を代表する1店となっています。
当店をオープンするにあたって、この辺りはグルメ激戦区となっておりなかなか物件が空かず、決定まで三年待ったそう。
コンクリートうちっぱなしの店内は清潔感ある質素な造りで、禅の精神を体現したような空間となっている。またクラシック音楽が控えめな音量でかかっており、炭のパチパチとした音とともにひたすらに焼鳥と向き合い存分に楽しんで欲しいという、店主大草さんの想いがひしひしと伝わってくる。
当店の予約は一週間前の12時から電話で可能。平日であろうと19時以降は一瞬で埋まるので、神社にでもお参りして日ごろから徳を積んでおくか、比較的空いている17時からの席を予約すると良いだろう。ちなみに私は平日の17時から予約しました。予約時に苦手な食べ物と好きな部位を聞かれるので、応えられるよう準備しておくのが吉。私はハツとハツ元が好きなのですが、欲張りすぎるのもダサいのでハツとだけ伝えておきました。
ちなみに当店は動画や写真の撮影は一切NG。2021年初辺りまではOKだったらしいのですが…。グルメブロガーとしては非常に残念ですが、何かしらの事情があるのでしょう。もしかしたら客層の清潔化を目的に、写真投稿目当ての馬鹿なインフルエンサーを寄せ付けないようにしたのかもしれません。品格を重んじる荒木町の暗黙のルール。
いざ行ってみると、なんと17時からの部は私たちだけ。貸し切り状態です。大草さんが私たちだけのために炭を用意し、私たちだけのために焼いてくれます。私はこういう高級店で客層を確かめるのも日課になっているのですが、それがみれなかったのは残念。
以下ダイジェスト版でどうぞ。一品目のささみだけTwitterの写真を拝借したのですが、やはりあまり載せすぎるのもグルメのプライドが廃るので、これだけにとどめておきます。
【2023年1月 コースの内容】
★三重県 熊野地鶏 ささみ(むねの内側)
焼鳥界のビジュアル担当。脂がないためパサつきやすく、焼くのが非常に難しい部位なのですが絶妙な火入れで水分を適度に残しつつプリっとした食感。パラっとふりかけた岩塩とわさびが美味い美味い。
熊野地鶏は三重県熊野市紀和町で飼育されているのですが、かつては鉱業が盛んだった緑豊かな山間の町で「日本一おいしい地鶏」を目指し10年以上の歳月をかけて作られた地鶏です。「八木戸(やぎど)」と「伊勢赤どり」で生まれた雄と名古屋コーチンの雌を掛け合わせる三元交雑で生まれた地鶏です。
★千葉県 水郷赤鶏 はごいた(ももの真ん中 赤身の部分)
ももの中でも赤身に近い割とさっぱりとした部位なのですが、肉自体にコクがありムシャムシャとした食感とジューシーさがすごい。
水郷赤鶏は在来種であるロードアイランドレッドの血統を色濃く残す銘柄鶏で、生育には時間がかかるもののその分絶妙な食感とコクがあります。肉も柔らかいので和・洋・中どんな料理にも対応できるオールマイティーな鶏肉です。
★静岡県 アメーラトマト
静岡のアメーラトマトに削ったチーズを山のように振りかけ、フライドオニオン・紫玉ねぎのスライス・特性ドレッシングで頂きました。瑞々しさがたまらなく美味で口直しにぴったりです。
★福岡県 博多地鶏 ハツ(心臓)
ハツといえばだいたいどの店に行っても開いて刺すのですが、当店は開かずにそのまま刺して焼く豪快っぷり。開くことで均一に火が通りやすくなるのですが、当店にかかればそんなことは関係ない。特有のレバーっぽさはなく、プリッとした独特の食感と瑞々しい肉汁が素晴らしい。備長炭の弱めの火でじっくりと焼き、最後に表面にパリッと焼き色をつけています。
★兵庫県 丹波黒どり せせり(首の肉)
しっかりとした歯ごたえとジューシーで柔らかい食感が同居している矛盾。当店の鶏肉はすべて大ぶりなので、食べ応えが本当に凄い。
★秋田県 比内地鶏 手羽皮
表面がパリパリになるまで焼いた皮がずらりと串上に並んでいる。パリッとした食感のあとに皮のモチっとした歯ごたえ・鶏の旨味が凝縮された脂が滝のように溢れてくる。ああ、この幸せが永遠に続けばいいのに。そう思いながら一つ一つ丁寧に頂きました。
★玉子サラダ
大ぶりの半熟ゆで卵にスナップエンドウ・豆類・マッシュルームが添えられている。たまごには当店のお家芸であるぐでたまのようなかわいいデザインが施されています。写真を撮りたくなるし、食べてしまうのも惜しい。でも、あまりにもにこやかに微笑みかけてくるので、ええい、ままよと食べてあげました。黄身の濃厚さが凄すぎた。あと地味にパリッとした食感のスナップエンドウが箸休めに最適。
★京都 京紅地鶏 ふりそで
鶏の手羽元と胸の中間にあたる部位で、人間でいうところの肩の部位。ここまでの串の塩の味付けは最低限といったところで、鶏の旨味を引き立たせる演出が多かったのですが、この部位は非常に脂が載っておりジューシーなので、岩塩が強めに振りかけられています。ジューシーな脂の甘みと柚子胡椒・岩塩がとてつもないないトリオ。本日一番のお皿です。
★岩手 さわやかあべどり レバー
この串を語るには、まずさわやかあべどりの特殊な生育環境を語らなければならない。
・植物性の原料を中心とした飼料で飼育(低脂肪で、鶏肉特有の臭いを低減)
・トウモロコシを使用しない飼料で飼育(脂肪は白く、肉色がピンク)
・ビタミンEを多く添加した飼料で飼育(一般の鶏肉よりビタミンEが多く含有)
そのため、臭みのすくないその名の通りさわやかな食べ味が特徴の鶏肉です。この鶏のレバーは、レバーらしい味わいを残しつつ全然クサくない。この部位も水分が多く、繊維を壊さず程よく焼くのが難しいのですが、適切な水分量を残した絶妙な焼き加減は本当にアッパレ。
★福島県 伊達鶏 手羽先
ここまでで既にお腹一杯なのですが、凄まじく大ぶりな手羽先が何と三本もついているではないか。串から外し手で豪快に食べるのが楽しい。歯ごたえがとにかくすごく、ムシャムシャとした食感がクセになります。
★ポテトサラダ
一般的なマッシュされたポテトではなく、さつまいもがそのまま、お化粧されて出てきます。これはこれで斬新なプレゼンテーションだ。あまくてほっくりとしたサツマイモがある種デザートのように振る舞います。
★親子丼
これも想像の三倍くらい、その辺のランチで出てきそうな量の親子丼がやってきてワイの胃も嬉しい悲鳴。連れは食べきれないので私が1.5杯分くらい食べました。玉子かけご飯の上に親子が載っており、ダシのムラなどがなくどこから食べても美味しい一杯でした。単純に卵の美味さが際立つ一皿です。
★なめのこ赤味噌汁
〆は日本人の心の故郷味噌スープ。鶏スープで〆る店も多いですが、味噌汁も最高ですねえ。五臓六腑に染み渡ります。
税・サ込みでコースは9千円、飲み物は700円内外と良心価格なので、二杯ずつ飲んでお会計は一人当たり1.1万円ほど。世界最高峰の焼鳥職人の歴史とプライドをこのお値段で頂けるのは奇跡でしかない。また、客を品定めするような居心地の悪い雰囲気もなく、店主の方は気さくに話しかけて下さります。そのあたりも最高じゃないか。調子に乗った鮨屋はぜひとも見習って欲しいものである。
もちろん安い焼き鳥屋にも良さがあるのですが、是非一度こういう店にも足を運び、その違いを体感してみてください。きっとハマります。